急な災害に備えなきゃいけないのに、育休って取れるのかな?
それに怖い上司たちがすんなり取らせてくれるの?
今回はこんな悩みに答えていきます。
消防士は地方公務員のため、出産や育児に関する休暇制度は充実しています。
女性は、その制度を利用し、しっかり出産育児で休みを取っています。
しかし、男性はというと育児休暇を取る人はほとんどいませんでした。
平成29年度には消防部門の男性職員の育児休業所得率はなんと0.8%と地方公共団体全体が4.4%と地方公務員の中でも低い数字になってしまっています。(消防消第122号より)
この結果を受け、さまざまな取り組みが各自治体消防で行われるようになり、現在は男性も育児休暇を取りやすくなってきています。
では、実際はどうなのか詳しく説明していきます。
女性消防士で育休を取らない人はいない
まず女性ですが、私がいた本部において、女性の育休所得率は100%でした。
東京消防庁においても令和3年度の女性の取得率は100%になっています。(東京消防庁における女性活躍推進に関する状況より)
さらに東京消防庁の女性消防士で1年以上取得している人は91.1%となっています。
私のいた本部でも大半が3年間育休を取得しています。
さらに、育休期間に次の子どもが生まれて、何年も見ないといった人も珍しいことではありませんでした。
これは、消防の女性は家庭にといった古い価値観の世代が多いことが、育休においてはメリットになっており、「女性は家庭で子どもを見るのが当たり前」となっています。
また、先輩女性職員がしっかりとっているので、価値観は少しづつ変わってきていても、その傾向は変わっていってはいません。
育休だけではなく、妊娠が判明した時点ですみやかに負担の少ない業務に変更してもらえ、復帰後も休みが取りやすい状況で勤務できるように配慮してもらえる場合がほとんどです。
さらに、現在は女性の管理職を増やしていくといった流れもあり。長く育休を取ったとしても、女性のキャリアアップにも、何も問題がありません。
男性消防士の育休所得の真実
最初に説明したように、ほんの数年前までは男性消防士で育休を取るなんてことは考えられませんでした。
しかし、国が男性の育休取得に力を入れてきたおかげで、男性消防士でも育児休暇を取る人が増えてきました。
先程のデータでも東京消防庁の男性の8.1%が取得しており、冒頭での0.8%に比べると取る人が出始めたといった感じになってきています。
では、実際はどうなのかと真実を説明していきます。
事実としてはまだまだ取りにくいと言わざる得ません。
育児休暇を取りにくい3つの原因
まず民間の育児休暇を取りにくい原因はなんでしょうか?
平成29年度労働調査によると男性が育児休暇を取得しない主な理由は以下のようになっています。
業務が繁忙で職場の人手が不足していた:38.5%
職場が育児休暇を取りにくい状況だった:33.7%
自分にしかできない仕事や担当している仕事があった:22.1%
収入を減らしたくなかった:16.0%
これを知ってもらった上で、消防士が取りにくい理由は下記の3つです。
人手が足りない
育児休業を取りにくい雰囲気
収入が減る
この原因を説明する前伝えておきたいのは、民間に比べて育児休暇を取得しない理由が少ないにも関わらず取得率が異常に低いということです。
つまり、消防はそれだけ、男性の育児休暇に対して理解が乏しいということです。
人手が足りない
ここ数年消防職員の人数が減っている本部がたくさんあります。
退職者が増えているにも関わらず、公務員は退職する人が少ないと昔のままの感覚のため、採用人数が定年退職者の人数だけにとどまり、ギリギリの人数で職場が回っている状況です。
そのため、急に休みが仕事になったりもしている中で、育児休暇を取得されてしまうと職場が回らないということが起こります。
特に現場活動のある消防署においては、一定の人数を必ず確保して災害対応しなければいけないため、人数を減らすわけにはいきません。
育休所得率が本庁に比べて、消防署が低い理由の一つでもあります。
直接、上司から育休を取るなとは育児休暇取得促進の中言うことはありませんが、取りにくい状況を作り出してくることはあります。
特に若手職員や救助隊は、その雰囲気を感じて言い出せないこともあります。
育児休暇を取得促進と言いながら、休めない環境を作られているため、取得したい職員を悩ませています。
育児休業を取りにくい雰囲気
民間でも33.7%の人が感じている育児休暇を取得しにくい雰囲気ですが、消防ではこれがさらに激しいものになっています。
育児をそもそも男がするものではないと考えている老害が、今でも多数存在しており、育児休暇を男性が取ることの批判を、取る人がいない職場であっても、大きな声で話していることが多々あります。
さらには、育児休暇から戻ってきた職員に対しても、理解は一欠片もなく、「休み中のんびりできたか?」なんて聞く人が後を断ちません。
今だにかなり男の育児に対して否定的な環境です。
育児休暇を取ろうとする職員になんのために取るんだと詰め寄るような老害もいます。職場の環境によっては非常に取りにくい場合もあります。
収入が減る
育児休業を取ると雇用保険から育児休業給付金が支給されます。
金額はそれまで支給されていた給与の67%になりますが、税金がかからないために約8割が6ヶ月は続くようになっています。
しかし、消防職員の給与は一般では多いと誤解されていますが、決して多いものではなく、特殊勤務手当や時間外がなくなることを考えると育休取得してしまうと収入源は否めません。
そのこともあり、長期で取得する人は皆無に等しく、東京消防庁ですら6ヶ月以上の取得は0.4%と低く、1年以上となると0.2%となります。
長く育児休暇を取得しようと考えていた職員もいましたが、収入源を考えると無理だと復帰を早めた職員もいました。
男性消防士は育休を取ったほうがいい?
取りにくい原因を見た後だと、取らないほうがいいのではと考えてしまう方もいるかもしれませんが、
【育児休暇は必ず取ったほうがいい】
これだけは断言できます。
赤ちゃんが小さい時の奥さんの体の負担はとても大きく、消防職員の普段の勤務を考えれば、かなりの支えに慣れることは間違いありません。
消防士は他の職業と比べてもかなり育児に向いていると言えるからです。
理由については下記の記事を参考にしてください。
育休を取得すれば奥さんの助けとして、夫婦仲はよくなり、子供の成長をしっかり見ることができます。
時々、老害の育児しなかった話に影響を受け、亭主関白ぎみになる職員もいますが、そんな時代錯誤の話に振り回されることなく、しっかり家事育児を協力して行ってくださいね。
どうしても仕事が気になる人がいるかもしれませんが、気にする必要は全くありません。
育児休暇に対してあなたに文句をいう人はそもそも他のことでも文句をいう人です。
時代の流れを理解しない老害に、あなたの育児休暇取得を邪魔されることは、今後のキャリアにも働きやすさにも全く問題はありません。
あまりにひどいようなら育児休暇中に転職も考慮していきましょう。
育児休暇の注意点として、昇任試験を受ける年数が通常より遅くなる可能性があります。
育児休暇期間職歴がカウントされず、同期が昇任試験を受けているのに受けれないといった場合も…
早く昇任したいと思っている人は各本部の昇任の要綱を確認してください。
ただし、よほど昇任欲求がない限り気にする必要はありません。
まだまだ取りにくい環境ですが、負けてはいけません。
消防士の代わりはいますが、家族であなたの代わりはいないんです。
育児休暇に否定的な人への対応方法
性格的に多少取りにくくされても、気にせず取得できる人は問題ありませんが、気にしてしまう性格の人もいるかもしれません。
気にしてしまう人は、ギリギリまで理解のある上司だけに伝えておくようにしましょう。
人によっては伝える必要もないのに、なぜ報告しなかったと言われることもあります。
また、ネチネチ理由を聞いてきたり、自分の育児しなかったエピソードからの取る必要のなさを聞かされることもあります。
それを防ぐためにも、上司以外で話すならよほど信頼できる人のみに留めておきましょう。
消防は、すぐ噂が広がるので、職場環境によっては上司に伝えるのもすぐにではなく、この日までに伝えますとあやふやな期限を伸ばすことも必要かもしれません。
職場環境が良好であれば、ここまで気にする必要はもちろんありません。
しかし、不安がある職場なら、自衛していく必要があります。
もし、予想に反して早くバレて、否定的な人にバレてしまった場合は、【開き直り】が効果的です。
ネチネチタイプは弱々しくいくと、つけあがる人が多いのが消防です。
どうせ数日後には育休に入るので思い切っていきましょう。
育休終了までに職場の仲がいい人に情報を取り、戻った時の環境に不安を感じるなら、復帰前に理解のある上司に相談しておくのも検討しておきましょう。
奥さんが知っておいた方がいい消防士の育休
消防士の奥さんは、旦那さんの職場の状況をしっかり聞いておいてあげてください。
実際、妊婦で大変な時にそんな話をするのもきついかもしれませんが、知っておかないとおもいがけないことが起こる可能性もあります。
復帰後にうつになるまで追い込まれてしまう消防士も少なからずいます。
そんなパターンはまれですが、消防にはまだまだ理解ができないハラスメントが残っています。
育休をきっかけに職場のことをきちんと聞いておくことは、育休後の子育てにも影響があります。
うつにならなくても、子供の行事等で休みにくいなんてことも…
職場環境のせいで、夫婦関係が悪くならないための話はしっかりしておきましょう。
まとめ
消防士の育休はまだまだ取りにくいのが現状です。
国は取得率をあげようとしており、所得したい職員も増えています。
しかし、人数の問題、意識の問題等が改善されず、育休を取る人が増えてしまうと、残る人の負担が大きく、育児休暇を取る人に対して寛容になれていないと問題が山積みです。
ただ、育児休暇を取る人がどうにかできることではありません。
育休を取る環境が整うのを待っている間に、育休が取れなくなります。
取りにくさは残っていますが、取れるようにはなっています。
家族のため、このまだ遅れている環境に負けることなく、育児休暇を取得し、家族の時間を大切に有意義な時間を過ごしてください。
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